ピロリ菌とは
日本人では3人に1人がピロリ菌に感染
最近話題になっているピロリ菌は正式にはヘリコバクター・ピロリ菌といいます。
胃粘膜に感染して萎縮性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、過形成性ポリープなどの原因となるといわれています。また胃がんの9割以上がピロリ菌感染が原因であると報告されています。日本人では3人に1人がピロリ菌に感染しているといわれ、ピロリ菌の感染検査や除菌治療を受ける方も増えています。
参考:2014年5月-2016年12月までにNPO法人二十歳のピロリ菌チェックを推進する会(ハタピの会)が行ったピロリ菌感染のスクリーニング検査の結果から
衛生環境の悪さが感染率を上げる
ピロリ菌は経口で感染することがわかっていますが、それ以外の感染経路、予防方法はわかっていません。ピロリ菌は4、5歳以下の免疫力が弱い時期に感染するといわれています。
上下水道の普及が遅れている衛生環境が悪い国では感染率が高いのですが、日本は先進国としては例外的に40代以上を中心に感染率が高くなっています。ただ、20代より若い世代では感染率は低下しています。ピロリ菌は免疫力の弱い乳幼児期に感染するといわれています。したがって、乳幼児期の衛生環境の良し悪しが感染率に大きく関わっているといわれています。
ピロリ菌の診断方法(検査)
常に胃の調子、お腹の調子が気になっている方はピロリ菌感染も気になるでしょう。ピロリ菌の検査は内視鏡を使う方法と使わない方法があります。
※健康診断などで慢性胃炎が観察され、ピロリ菌の検査を希望される方は、健康診断の結果を持って来院してください。
内視鏡を使う検査
迅速ウレアーゼ法
内視鏡によって胃の粘膜を採取し、ウレアーゼというピロリ菌が持つ酵素を検出してピロリ菌の感染を診断します。ウレアーゼは尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解します。アンモニアに反応して色が変わる試薬に採取した粘膜を入れて判断します。
胃の粘膜を採取し、顕微鏡でピロリ菌がいるかどうかを直接観察します。迅速ウレアーゼ法と併用して行う場合があります。
内視鏡を使わない検査
抗体検査
ピロリ菌に感染した際に体内につくられる抗体を調べる検査です。尿や血液などから抗体の有無を調べます。
便中抗原検査
便に含まれるピロリ菌の構成成分(抗原)の有無を検査します。
尿素呼気試験
試験薬内服前後の呼気を調べてピロリ菌の有無を確認します。感度・特異性ともに高く、検査時間も30分程度と迅速に結果が出ます。除菌後の検査に用いられます。
ピロリ菌感染検査の保険適用について
気になるピロリ菌ですが、ピロリ菌の感染検査は以下の場合、健康保険が適用になります。
- 内視鏡検査によって早期胃がんやピロリ菌が原因の萎縮性胃炎が見つかった
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍の治療中もしくは治療既往がある
- 胃MALTリンパ腫、突発性血小板減少性紫斑病がある
ピロリ菌の除菌治療
除菌は抗菌薬を服用することで行います。薬を服用後6〜8週間で検査をして、除菌に成功したかどうかを確認します。一次除菌の成功率は90%と高いですが、失敗した場合には二次除菌を行います。
一次除菌・二次除菌
2種類の抗菌薬と、胃酸の分泌を抑える薬の3種類を、朝・晩の2回、7日間服用します。一次除菌の検査後、二次除菌が必要となった場合には、抗菌薬を替えて再度同様の手順で除菌を行います。
除菌治療薬の副作用
副作用として肝機能の(AST(GOT)、ALT(GPT))値が変動することがあります。また、軟便、下痢、味覚異常などが報告されています。除菌薬服用を終了すればほとんど治まります。症状がひどい場合には、医師にご相談ください。
また、アレルギー反応として発疹やかゆみが起こる場合があります。発疹がきつい場合は直ちに服用を中止し、医師にご連絡ください。