胃がんとは
国内の胃がんの診断数は年間12万件以上(2019年)、死亡者数は4万人以上(2020年)にのぼります。
内視鏡を用いた胃がん検診やピロリ菌検査の普及などにより罹患者数は減少傾向にありますが、それでも私たち日本人にとって身近ながんであることに変わりありません。
胃がんは、胃の粘膜の細胞ががん化することで発生します。進行すると、粘膜から筋層、漿膜、さらには大腸・膵臓・肝臓・横隔膜などにも拡大します。
胃がんは、胃カメラ検査による早期発見が可能です。早期であればあるほど低侵襲の治療が可能となり、治癒率も高くなります。一方で自覚症状に乏しいがんであるため、40歳を過ぎた方は年に1回、症状の有無に関係なく胃カメラ検査を受けることをおすすめします。
参照:https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/5_stomach.html#anchor1
胃がんの原因
胃がんの最大の原因は、ピロリ菌の感染です。とは言え、ピロリ菌に感染した人が必ず胃がんを発症するわけではありません。持続的な感染によってまず慢性胃炎を発症し、そのうちの一部が萎縮性胃炎、さらに胃がんへと進行します。ピロリ菌検査、除菌治療を受けておくことが、胃がんのもっとも有効な予防法と言えます。
その他の原因としては、喫煙、塩分の摂り過ぎ、野菜・果物の不足などが挙げられます。
胃がんの症状・初期症状はあるのか
- 胃やみぞおちの痛み
- 胃の不快感、重い感じ
- 上腹部の張り
- ゲップ
- 吐き気
- 食欲不振、体重減少
- 黒い便(タール便)
- 貧血、めまい
胃がんは、初期症状の乏しいがんです。上記のような症状が現れる前に胃カメラ検査で発見することが、早期治療につながります。
また症状が現れてからも、胃炎や胃潰瘍と似通っているため、受診を先延ばしにされがちです。「症状は気づいていたけれど、まさか胃がんだと思わなかった」というケースが少なくないのです。
胃がんの検査・治療方法
診断について
症状、既往歴・家族歴、服用中の薬、生活習慣などをお伺いした上で、胃カメラ検査を行います。カメラを介して直接粘膜を観察するため、がんを早期に発見することが可能です。胃カメラ検査の際には、組織を採取する病理検査、ピロリ菌検査を行うことも可能です。
胃がんの検査としてバリウム検査も挙げられますが、影絵のように粘膜の状態を観察する検査であるため、現在ではあまり行われません。またバリウム検査で胃がんの疑いが出た場合にも、結局は確定診断のために胃カメラ検査を行う必要があります。
当院では、内視鏡専門医が鎮静剤を使った苦痛の少ない胃カメラ検査を提供しています。どうぞ、安心してご相談ください。
治療について
早期胃がん
胃カメラを使って切除することが可能です。全身麻酔の必要ない、低侵襲の治療です。
ただし、リンパ節転移が疑われる場合には、手術が必要になります。
進行胃がん
開腹手術、または腹腔鏡手術が行われます。
手術の前後に抗がん剤治療を組み合わせることもあります。また補助的に、放射線治療が組み合わされることもあります。
胃がんを予防するには
胃がんの原因、リスク因子などを考えると、以下のような方法が、胃がんの予防につながると言えます。
ピロリ菌検査・除菌治療
ピロリ菌の感染は、胃がんの最大の原因と言えます。
すでに慢性胃炎などの症状が現れている方はもちろん、ご家族がピロリ菌検査で陽性だった方など、リスクの高い人はピロリ菌検査を受けましょう。また陽性であった場合には、必ず除菌治療を受けてください。
食生活による予防
「胃に負担をかけない食生活」を念頭に、以下の点にお気をつけください。
3食をできるだけ決まった時間帯に摂る
食べ物を分けて食べることで、胃酸の濃度が高くなりすぎることを防ぐことができます。
また規則正しく食べること、就寝の直前などに食事をしないことなども大切です。
食べ過ぎ・早食いをしない
食べ過ぎ、早食いはいずれも胃酸の過剰な分泌を招きます。
腹八分目を基本とし、ゆっくりよく噛んで食べるようにしましょう。
アルコール・刺激物を摂り過ぎない
アルコール、カフェイン・香辛料などの刺激物の摂り過ぎは、胃酸の過剰な分泌を招きます。
お好きな人も多く、必ずしも完全に断つ必要はありませんが、摂り過ぎないようにしましょう。
運動や睡眠などによる予防
適度な運動、十分な睡眠は、健康を維持・増進するための大切な要素となります。
適度な運動
適度な運動は、胃腸への良い刺激となり、機能の正常化を後押しします。また肥満の解消、生活習慣病の予防・改善という意味でも有効です。
続けることが大切ですので、楽しめる運動を見つけましょう。
十分な睡眠
十分な睡眠は、自律神経のバランスを整え、胃腸の働きを正常化させます。
就寝時間・起床時間をできるだけ一定にすること、寝室の環境を整えることで、睡眠の質にもこだわりましょう。